廃食用油(廃食油)(はいしょくようあぶら)
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廃食用油は廃棄?リサイクル?
てんぷらや揚げ物などの料理に用いられた食用油の使用後の油を廃食用油、もしくは廃食油と言います。使用済みの食用油を生活排水として排出してしまうと、水質が汚濁してしまい環境汚染につながること、さらに資源の有効な再利用という面からも、回収・再生の取り組みが進んでいます。
事業系の廃食用油は有価物として取り引きされることも多く、約7割が飼料用にリサイクルされるなど、外食産業にとって重要なリサイクル方法となっています。
家庭で出る廃食用油の使い道
一方で、家庭で発生する廃食用油は、リサイクルが進んでいないのが現状ですが、自治体や民間企業ごとに少しずつ取り組みが広がっています。
例えば名古屋市では、市内のスーパーにおいて廃食用油を回収し、精錬事業者によりバイオディーゼル燃料(軽油代替燃料)に精製。それを名古屋市のごみ収集車および市営バスといった公用車で使用しています。バイオディーゼル燃料は軽油と比較すると二酸化硫黄や黒煙の排出が少なく、環境に優しい燃料とも言われ、注目が集まっています。
名古屋市の場合、回収できるのはサラダ油、菜種油、ごま油などの植物性油。動物性油、機械油、燃料油などは回収できません。油の出し方としては、十分冷ました後、天かすなどの固形物を取り除いた食用油を500ミリリットルのペットボトルに入れ、しっかりフタを閉めて回収拠点に持っていきます。
回収量は年々増え、2014年度は48,388リットルだった回収量が、2018年度にはおよそ67,000リットルまで増えるなど、廃食用油の回収・再利用の意識は高まっています。
飼料化、工業原料化も可能な廃食用油
その他の事例として、廃食用油は飼料、工業原料、塗料、石鹸などの原料として有効利用されています。特に石鹸化については、全国各地でNPOや民間企業を中心に取り組みが進行中。ただし、石鹸自体の利用が減少していることから、採算性の確保が難しくなったという背景もあり、環境教育や地域啓発を目的とした取り組みが多いというのが現状です。
飼料化や工業原料化は、主に廃食用油を多量に排出する事業者などが、塗料や家畜飼料に加工する業者に委託。再生事業者と連携した取り組みが進んでいます。飼料化、工業原料化は、石鹸化やバイオディーゼル燃料へのリサイクルが主に植物性油脂を対象にしているのに比べ、動物性油脂も対象になる点が特徴ですが、使用用途によっては分別が必要になります。
今後、廃食用油のリサイクルをさらに進めるためには、生成品の品質を保つという観点からの異物の混入対策が求められます。また、廃食油は引火物質であることから、安全面に配慮した収集の仕組みづくりなども必要になるでしょう。